中小企業の賃上げ推進とその課題:2025年春闘の結果から

はじめに
2025年春闘では、大企業に続いて中小企業でも賃上げの動きが顕在化しました。連合が掲げた「6%賃上げ」の方針に対し、多くの中小企業がこれに追随する姿勢を見せましたが、結果としては届かず、平均で4.3%程度にとどまったという調査結果も報じられています(出典:連合/日本経済新聞)。
本記事では、この賃上げの動向が中小企業経営にどのような影響を与えるか、また持続的な賃上げを実現するための経営戦略について考察します。
2025年春闘の概要と中小企業の動向
賃上げの背景
・深刻な人手不足と人材の確保競争
・物価上昇による生活コストの増加
・政府の「賃上げ税制」などの後押し政策
2025年春闘では、特に製造業・IT業・建設業などにおいて、即戦力となる人材確保のために賃上げ圧力が強まりました。経団連加盟の大企業では平均5%を超える賃上げが相次ぎ、サプライチェーン上の中小企業にも波及しました。
中小企業の実態
一方で、中小企業では以下のような制約があり、十分な賃上げに踏み切れない現実があります:
- 原材料費・エネルギーコストの上昇
- 売上に対する利益率の低下
- 価格転嫁力の弱さ
このため、賃上げを行った企業の中でも、賞与の一時的増額や定期昇給の見直しにとどまるケースが多く、「構造的な賃上げ」には至っていない状況です。
中小企業が直面する課題
① 経営体力の限界
労務費の上昇により、資金繰りが一層厳しくなる中小企業も少なくありません。特に赤字企業や借入依存度の高い企業にとっては、固定費の増加が死活問題となるリスクがあります。
② 差別化要因の欠如による価格競争
顧客企業からの価格転嫁交渉が難航し、結果として利益を圧縮せざるを得ないケースも見られます。コスト上昇分を価格に反映できないことは、持続的賃上げの障壁となっています。
③ 労使間の温度差
経営者側は「業績に応じた賃上げ」を主張する一方、従業員側は「インフレに見合う生活賃金」を求める傾向が強まり、労使交渉の難度も増しています。
持続的な賃上げのための打ち手とは?
✔ 生産性の向上
省人化・自動化・業務効率化により、一人当たりの付加価値を高めることで、賃上げの原資を生み出す必要があります。たとえば中小製造業では、IoTや簡易なAIツールを活用した見える化・工程管理の導入が注目されています。
✔ 賃上げを戦略に組み込む
単なるコストとしてではなく、賃上げを「人材確保・定着率向上・企業ブランド力強化」として捉えるべきです。人件費は未来の売上への投資という視点が求められます。
✔ 価格転嫁の交渉力強化
自社独自の技術やサービス提供によって、取引先との交渉力を高めることで、価格転嫁を実現しやすくなります。必要に応じて、業界団体との連携や取引慣行の見直しも視野に入れましょう。
✔ M&Aによる体質強化
同業他社との統合や、収益性の高い周辺事業の買収などを通じて、スケールメリットを活かした経営体質の強化も有効です。特に人材やIT資源を持つ企業とのM&Aは、中長期的な人件費負担の吸収にも寄与します。
おわりに
中小企業にとって賃上げは避けて通れないテーマです。一方で、無理な賃上げは経営リスクにもなりかねません。だからこそ、表面的な対応ではなく、「賃上げできる構造」への転換が不可欠です。
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