トヨタ、トヨタ産業を非公開化へ:4.95兆円のM&Aが示すガバナンス改革の兆し

はじめに

2025年6月3日、トヨタグループは、トヨタ自動織機(Toyota Industries Corporation)を約4.95兆円(約330億ドル)で非公開化するM&Aスキームを発表しました
(出所:Reuters, Bloomberg)。
このTOB(株式公開買付け)は、日本企業におけるグループ経営の効率化・ガバナンス強化の象徴的事例として注目を集めています。


1. 非公開化の構造と背景

取引の概要(出所:日本経済新聞2025年6月4日)

  • トヨタ不動産を中核とした持株会社がTOBを主導。トヨタ自動車は優先株式約7,000億円分を取得。
  • トヨタ章男会長は個人で約10億円出資し、安定株主としての意思を示す。
  • Denso、Aisin、豊田通商などグループ企業もTOBに協調参加。

目的と背景

  • グループ間の株式持ち合い解消を通じた資本効率の向上。
  • アクティビスト投資家からの圧力(例:Oasis Management)への対応。
  • 非公開化による中長期的投資・事業再編の柔軟性確保。

2. 少数株主の反発とアクティビストの主張

  • TOB価格は1株あたり16,300円に設定されたが、発表直前の市場価格18,400円を下回っており約11%のディスカウント。
    (出所:Reuters
  • 香港のアクティビストファンド「Oasis Management」は「価格が不十分」としてTOB価格の引き上げを要求。
  • 少数株主保護や開示ルールの強化を進めている東証の監視の下、価格の妥当性とTOB手続きの公正性が今後の焦点となる。

3. 日本型M&Aが迎える新たなステージ

✅ クロス株保有の見直しとガバナンス改革

本件は政府・東証が推進する資本効率改善の流れに合致。
「物言う株主」への対応も含め、日本企業のM&A戦略に新たな視点をもたらしている。

✅ コングロマリットの選択と集中

非公開化により、物流や電動化など将来技術分野に集中投資する構造に。
株主の短期圧力から離れ、中長期目線の経営が可能になる。

✅ アクティビストとの交渉がM&A戦略の一部に

今回の事例では、少数株主との“価格交渉力”が企業側に問われている
今後の取引でも、バリュエーションと公開買付の透明性が一層重要に。


4. 実務担当者への示唆

ポイント解説
① TOB価格の妥当性評価複数の価値評価手法や第三者委員会の見解などを組み合わせ、少数株主の納得を得るプロセス設計が鍵。
② アクティビスト対応事前のIR活動・株主コミュニケーション戦略が重要性を増す。
③ 非公開化後の統治体制設計執行・監督の分離、社外役員の活用など、信頼を担保する体制構築。
④ 再上場も視野に入れた中長期戦略再上場時に高評価を得られるよう、財務・ESG・事業構造の透明化が必要。

まとめ:トヨタの決断は“ガバナンス強化型M&A”の先駆け

トヨタグループによるこの非公開化は、
「ガバナンス強化 × 長期投資戦略 × アクティビスト対応」を組み合わせた新しいM&Aモデルの象徴といえます。

これは今後、日本企業がグループ再編を進める上での有力な参考事例となり、
資本効率を意識した「攻めのM&A」の加速を促す契機にもなるでしょう。


おわりに

MAITコンサルティングでは、大手証券会社や外資系コンサルティング企業で20年以上の経験を有するM&Aプロフェッショナルがお客さまのM&Aの成功をサポートいたします。また、ITプロフェッショナルが経営効率の改善などを通じた事業価値の向上をご支援いたします。

まずはお気軽に無料相談をしてみませんか?下記お問い合わせからのご連絡お待ちしています。

お問い合わせ

まずは無料相談を承っています。たった30秒で、未来が変わる第一歩を踏み出しませんか?貴社の“M&A戦略”、無料でプロが診断します。

投稿者プロフィール

Akira Kitagawa
Akira Kitagawa