ポスト関税ショック後の資金調達術:M&Aによる経営体制強化とは
~外部環境リスクを“攻め”に転じる中小企業の戦略的選択~

2025年7月、米国が中国やその他一部諸国に対する追加関税措置を再発動する方針を発表しました。8月1日からの発効を控え、輸出型ビジネスを展開する中小企業、とりわけ部品・機械・電子系の製造業では、販売減・価格競争力の低下・在庫増による資金繰りの悪化リスクが高まっています(出所:Reuters, 2025年7月9日)。
このような「関税ショック」は企業のPL(損益)だけでなく、資金調達・経営体制の在り方にも大きな影響を及ぼします。今こそ中小企業が取り得るべき打ち手が、M&Aを通じた戦略的な資金調達と経営基盤の強化です。
なぜ関税ショックが資金繰りに直結するのか?
中小企業は、大企業と比べて次のような構造的リスクを抱えています:
- 為替や関税コストを販売価格に転嫁しにくい
- バランスシートが脆弱で資金調達手段が限定的
- キャッシュフローの変動耐性が低く、在庫負担が資金難に直結
これらのリスクは、外的ショックが発生した際に即座に資金繰り問題となり、経営の継続性に影響を及ぼすことになります。
資金調達の新たな選択肢としての「M&A」
従来、中小企業における資金調達手段といえば、以下のような選択肢が主でした:
調達手段 | 特徴 | 限界 |
---|---|---|
銀行融資 | 金利低・安定 | 審査厳格、与信枠に限界 |
補助金・助成金 | 非返済 | 対応業種・条件が限定的 |
社債・クラウドファンディング | 資金多様化 | 信用力や情報開示が必要 |
そこに、近年新たな選択肢として注目されているのが**「M&Aによる資本提携・経営統合」**です。以下にその代表的な活用パターンをご紹介します。
M&Aによる資金調達・経営体制強化の3つのモデル
1. 【資本提携型】外部出資による資本増強と信用力の向上
たとえば大手製造業や商社、地域ファンドとのマイノリティ出資型M&Aにより、以下のメリットが得られます:
- 追加の運転資金や投資資金の確保
- 銀行融資における信用力向上(財務レバレッジの改善)
- 資金だけでなく販路・人材・管理体制の強化も実現
2. 【事業売却型】不採算部門を売却し、主力事業に集中投資
関税の影響で収益性が悪化した事業を部分売却することで、以下のような財務再構築が可能になります:
- キャッシュの確保と借入金返済
- 経営資源の集中(選択と集中)
- 企業全体のROE・ROICの改善
3. 【経営統合型】スケールメリット獲得によるコスト構造の改善
同業他社とM&Aを実行し、調達・物流・開発などを統合することで、関税による単価上昇をコスト吸収力でカバーできます。
また、共同での現地法人設立・海外生産シフトを通じて、根本的な関税回避スキームの構築も可能です。
実例紹介:関税ショック下でのM&A活用(実在事例)
事例:東京都内 電子部品メーカーB社
- 背景:米国市場向け売上が全体の40%。2024年後半からの関税再発動により受注激減。
- 対応:商社系ファンドと資本提携。運転資金3億円を調達し、ベトナム現地法人設立に着手。
- 結果:2025年度は赤字回避、2026年には米国向け売上を「現地販売」として再構築し、企業価値を維持。
このように、M&Aを通じた「キャッシュ+構造改革」のモデルは、単なる資金調達にとどまらず、事業のサステナビリティ確保に直結する重要な手段です。
M&Aによる資金調達における注意点
論点 | 概要 |
---|---|
出資比率 | マイノリティ出資か過半取得かで、意思決定権に影響 |
企業評価(Valuation) | 自社の適正価値を理解して交渉に臨む |
情報開示体制 | 財務・契約・人事等、M&A対応の情報整備が必要 |
交渉の目的整理 | 単なる資金目的か、経営支援も求めるのかを明確化 |
出所一覧(参考)
- Reuters『BOJ will hold off rate hikes until March due to US tariff hit, ex-policymaker says』(2025年7月9日)
https://www.reuters.com/business/boj-will-hold-off-rate-hikes-until-march-due-us-tariff-hit-ex-policymaker-says-2025-07-09/ - 中小企業庁『中小M&Aガイドライン(2024年改訂版)』
- 日本貿易振興機構(JETRO)『海外生産拠点戦略とM&Aに関する調査報告書(2025年)』
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