倒産リスク急増時代の中小企業M&A戦略〜人手不足と事業継続の現実に向き合う
Akira Kitagawa
はじめに
2025年上半期、日本の企業倒産件数は前年同期比で大幅に増加し、11年ぶりの高水準となりました（東京商工リサーチ調べ）。倒産件数は4,990件と、コロナ禍前の水準を超える勢いです。その主因として指摘されているのが、深刻な人手不足と後継者不在です。
こうした環境下で、企業の持続的経営の選択肢として「M&A（企業の合併・買収）」が再注目されています。本記事では、倒産リスクが高まる今こそ中小企業が取り得るM&A戦略について、メリットと留意点を実務的視点から解説します。
倒産の主因：人手不足と経営者の高齢化
近年、地方を中心に若年層の労働力が減少し、特に小規模企業では採用難が経営の持続を困難にしています。さらに、中小企業庁の報告によると、70歳以上の経営者のうち約半数が後継者未定というデータも示されています。
このような背景から、「廃業」や「倒産」に至るケースが急増しており、企業価値がゼロになる前に事業譲渡やM&Aでの事業承継を検討する動きが加速しています。
M&Aによる事業継続のメリット
- 従業員の雇用維持
- 買収企業が引き継ぐことで、雇用を守れる可能性が高まります。
- 顧客・取引先の信頼維持
- ブランドや業務ノウハウの継続により、対外的な信用が保たれやすい。
- 経営者のハッピーリタイアメント
- 廃業よりも高値での資産化が可能となり、経営者自身の人生設計にも好影響を与えます。
- 事業価値の最大化
- シナジーのある買い手を選ぶことで、企業価値を適切に評価してもらえる可能性が高まります。
デメリット・留意点
- 買い手探しに時間がかかる
- マッチングには数ヶ月〜1年以上かかることも。早めの準備が重要です。
- 従業員・取引先への説明が必要
- 経営統合による文化の違いや体制変更に対する配慮が不可欠です。
- 情報開示とデューデリジェンス対応の負荷
- 財務・契約・人事などの資料整備が求められます。
- M&AブローカーやFA選定の慎重さ
- 不適切な仲介者によるトラブルも増加傾向。中小M&Aガイドライン第3版に基づく支援機関選びが重要です。
具体的なアクションプラン
- 現状分析（財務・人材・事業の継続性）
- 業界内・地域内のM&A動向を把握
- 専門家（FA・会計士・弁護士）への早期相談
- 中小M&Aガイドラインに準拠した進め方を確認
まとめ
人手不足と高齢化がもたらす倒産リスクに対して、中小企業がM&Aという選択肢を取ることは、従業員や顧客、経営者自身の未来を守る「攻めの事業承継」とも言えます。
将来の選択肢を狭めないためにも、早めの検討と専門家の支援を得ることが極めて重要です。
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