後継者がいない…その時に備える“第三の選択肢”M&Aとは？
Akira Kitagawa
日本の中小企業経営者にとって深刻な課題の一つが「後継者不在問題」です。帝国データバンクの調査によると、2024年時点で全国の中小企業の約6割が後継者未定の状態にあると報告されています。少子高齢化が加速する中、「誰に会社を託すのか？」は、もはや一部の企業だけでなく日本経済全体に関わる重要なテーマです。
本記事では、後継者が見つからない経営者にとっての“第三の選択肢”である「M&A（企業の売却）」の現実と可能性について詳しく解説します。
なぜ後継者が見つからないのか？
中小企業の多くが、家族経営や創業者主導のスタイルで成長してきましたが、近年は以下の理由から「親族内承継」が難しくなっています：
- 子どもが家業を継ぎたがらない
- 他業界・都市部で就職している
- 相続税や贈与税などの財産的な問題
- 業績不安や将来性の懸念
一方、「従業員承継」や「社内昇格」もハードルが高く、責任や資金調達の問題から実現が難しいケースが多く見られます。
“第三の選択肢”としてのM&Aとは？
こうした中、注目されているのが「M&Aによる第三者承継」です。M&Aとは、他社に会社の株式や事業を売却することにより、自社を引き継いでもらう手段です。
▶ M&Aの特徴
- 親族に頼らず会社を残すことができる
- 社員の雇用や取引先との関係を維持しやすい
- 買い手の成長戦略と合致すれば企業価値が高く評価される
▶ 買い手の主なタイプ
- 同業他社（横展開・地域拡大）
- 異業種（多角化や新規事業進出）
- ファンド（再成長・IPOを視野）
実際のM&A成功事例（※公表されている事例）
例：新潟県の老舗製造業A社
後継者不在に悩んでいたA社（年商3億円）は、首都圏の同業大手企業B社に売却。B社はA社の地域ブランドと技術力を高く評価し、従業員も継続雇用。経営者は退任後も顧問として数年関与し、円滑な引継ぎが実現しました。
M&Aによる第三者承継のメリット・デメリット
▶ メリット
- 会社の存続と従業員の雇用を守れる
- 経営者のリタイア後の生活資金を確保できる
- 業界内でのブランドや取引基盤が活かされる
▶ デメリット・注意点
- 情報漏洩リスク（初期段階では匿名交渉が一般的）
- 買い手との相性によっては文化の違いも生じうる
- 企業価値が正当に評価されるには事前準備が重要
M&Aを検討すべき「5つのサイン」
以下に該当する経営者は、早めのM&A検討が重要です：
- 後継者候補が社内・家族にいない
- 今後3〜5年以内に引退を考えている
- 借入返済に不安がある
- 取引先の集約が進み、今後の独立経営に不安がある
- 業界再編が進んでおり、タイミングを逃したくない
M&Aは“廃業ではなく、未来への選択肢”
2023年には、黒字廃業した企業数が過去最多を記録しました。その多くが「良い企業だったのに後継者がいなかった」ために消えていったのです。
M&Aは、そうした企業を「未来につなげる手段」として、ますます重要性を増しています。
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