日本政府、60兆円投資で中小企業の生産性向上へ：M&A促進も視野に
Akira Kitagawa
2025年5月14日、日本政府は「新しい資本主義実現会議」において、中小企業・小規模事業者の生産性向上を目的とした5年間で60兆円の官民投資計画を発表しました。この計画には、デジタル化・自動化の推進、M&Aの促進、価格転嫁の適正化などが含まれており、中小企業の経営基盤強化と賃上げ環境の整備を目指しています。
中小企業支援の背景と目的
日本の中小企業は、企業数の99%以上、雇用の約70%を占めており、経済の基盤を支えています。しかし、少子高齢化による人手不足や、デジタル化の遅れ、価格転嫁の困難さなど、多くの課題に直面しています。政府は、これらの課題に対応するため、以下の施策を打ち出しました。
1. 60兆円の官民投資による生産性向上
政府は、2029年度までの5年間で、官民合わせて60兆円の投資を行い、中小企業の生産性向上を図ります。具体的には、以下の取り組みが予定されています。
- デジタル化・自動化の推進：業種ごとの「省力化投資促進プラン」を策定し、AIやIoTなどの先端技術を活用した業務効率化を支援します。
- 全国的な支援体制の構築：商工会・商工会議所、地域金融機関など、全国約2,200か所の支援機関が、きめ細かなサポートを提供します。
- 補助金・税制優遇措置の活用：「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」など、各種支援策を通じて、中小企業の投資を後押しします。
2. M&Aの促進と事業承継支援
中小企業の経営者の高齢化が進む中、事業承継やM&Aの重要性が増しています。政府は、以下の施策を通じて、M&Aの促進を図ります。
- 事業承継・引継ぎ支援センターの体制強化：全国の支援センターが、M&Aに関する相談やマッチング支援を強化します。
- M&Aアドバイザーの資格制度創設：M&Aの専門家の育成と質の向上を図るため、新たな資格制度を導入します。
- M&A後のトラブル防止策の検討：M&A後に合意事項に反した場合の買戻しなど、トラブル防止のための措置を検討します。
3. 価格転嫁の適正化と取引環境の整備
中小企業が適切な価格転嫁を行えるよう、取引環境の整備も進められます。具体的には、以下の取り組みが予定されています。
- 下請法の改正：「中小受託取引適正化法」への改正を通じて、取引の適正化を図ります。
- 違反企業への対応強化：業所管省庁も含む執行体制を強化し、違反企業への対応を厳格化します。
- 自治体への支援：重点支援地方交付金の活用を促し、自治体の取引環境整備を支援します。
まとめ
政府の新たな中小企業支援策は、生産性向上、M&Aの促進、取引環境の整備など、多岐にわたる取り組みを通じて、中小企業の経営基盤強化と賃上げ環境の整備を目指しています。これらの施策を活用することで、中小企業は持続的な成長と競争力の強化を図ることが期待されます。
また、政府主導で中小企業の事業承継や業界再編などのM&Aの制度が整備されることは経営者、業界にとっても良いことと考えられます
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