第一生命、英生保に1600億円投資:金融業界のグローバルM&A戦略を読み解く

2025年5月、第一生命ホールディングスが英国の生命保険会社「アセンダント・ライフ」に約1600億円(約80億ポンド)の出資を行うことを発表しました。日本の保険会社による欧州市場での大型M&Aは近年稀に見る動きであり、グローバル金融業界における資本戦略の転換点とも言える出来事です。
本記事では、このM&Aの背景、狙い、そして日本を含むグローバルな保険業界の今後のM&Aトレンドについて解説します。
第一生命の英国投資の概要と狙い
第一生命が出資を決定した「アセンダント・ライフ」は、英国で中堅クラスの生命保険事業を展開し、近年は富裕層向け年金商品の伸長が著しい企業です。
▶ 出資概要
- 投資額:約1600億円(80億ポンド)
- 出資比率:49%(経営に一定の関与)
- 目的:欧州市場における年金・資産運用ビジネスの基盤強化
▶ 狙いと背景
- 国内人口減少・超高齢化による保険市場の成長鈍化
- 欧州での安定した長期運用益の確保(とくに英ポンド建て資産)
- ESG運用やグリーン年金商品への対応力強化
保険業界におけるグローバルM&Aの潮流
生命保険会社によるクロスボーダーM&Aは、以下のような業界構造の変化によって促進されています。
1. 低金利・逆ザヤの構造的問題
日本や欧州では長年にわたり低金利が続いており、運用収益を確保するために外貨建ての資産を増やす必要性が高まっています。M&Aを通じた現地事業の獲得は、外貨収入を安定的に得る手段の一つです。
2. 資産運用会社との境界の曖昧化
従来の保険会社は「保障」を中心としていましたが、現在は運用ビジネスへの依存度が高まっており、運用力のある海外企業との統合や買収が進行中です。
3. 規制環境の変化(ソルベンシーⅡなど)
欧州ではソルベンシーⅡに代表される厳格な自己資本規制があり、一定規模以上の資本力を持つ企業同士の提携が求められる傾向にあります。
今後のM&A動向と注目のプレーヤー
第一生命の動きは他社にとっても一つのモデルケースとなりうるため、今後は以下のようなプレーヤーの動きが注目されます。
🔹 日本のメガ保険会社(明治安田、住友生命など)
- 欧州や北米への再投資
- ESG対応型の商品開発力の獲得を目的としたM&A
🔹 海外保険グループ(アリアンツ、アクサ等)
- アジア新興国での拠点強化を視野に、日本・韓国企業との提携を模索
🔹 PEファンド・インフラ投資家
- 長期安定収益を狙い、保険会社の買収や分社化によるスピンアウト戦略を活用
経営者・投資家への示唆:クロスボーダーM&Aの成否を分ける視点
第一生命の事例から学ぶべき重要なポイントは、以下の通りです。
- 経済的インセンティブだけでなく、運用モデルや組織文化の統合計画が極めて重要
- 買収後のシナジー創出には現地マネジメントの尊重と中長期的なKPI設計が不可欠
- 規制・税制を含む現地のコンプライアンス対応を十分に準備すること
まとめ:第一生命の挑戦は“グローバル保険M&A新時代”の幕開けか
今回の第一生命による英国生保への投資は、単なる資産多様化を超えた「欧州での保険事業基盤の確立」を狙った本格的なグローバル戦略の一環と見るべきです。
人口減・超高齢化という日本特有の課題に対し、多くの企業が今後ますます国外への進出や再編を通じて打開策を模索していくと予想されます。
金融業界全体として、M&Aによる「持続可能な成長モデル」の確立が急務となっており、その中で本件は先行事例として注目されるでしょう。
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