地方中小企業のM&A意識調査：慎重姿勢が強まる背景とは？
Akira Kitagawa
はじめに
近年、中小企業の後継者問題や事業承継課題を背景にM&A（合併・買収）が広く注目されていますが、2025年に実施された鹿児島県内企業を対象とした調査（帝国データバンク鹿児島支店）では、「今後5年以内にM&Aに関与する可能性がない」と回答した企業が51.9％に達したことが報告されています。
これは、地方の中小企業におけるM&Aに対する慎重な姿勢を浮き彫りにするものです。
本記事では、地方中小企業におけるM&Aへの慎重姿勢の背景と、これからM&Aを活用していくために必要な視点について詳しく解説します。
地方中小企業におけるM&A慎重姿勢の現状
調査結果の概要
- 「M&Aに関わる可能性がない」と回答：51.9％
- 「積極的にM&Aを検討している」と回答：わずか5.7％
（出典：南日本新聞373news.com）
この結果から、地方におけるM&Aはまだまだ一般的な選択肢とはなっていないことがわかります。
地方企業がM&Aに慎重な背景
1. 経営者の高齢化と情報不足
地方の中小企業では、70代以上の経営者が多く、M&Aの知識や経験に乏しいケースが目立ちます。
「そもそもM&Aがどういうものかよくわからない」という不安から、及び腰になる企業が少なくありません。
2. 地元志向の強さと独自文化
地方では、企業と地域社会との結びつきが非常に強く、
- 地元従業員の雇用維持
- 地域貢献への責任感
などを重視するため、外部資本への売却に対して心理的な抵抗感が根強く存在します。
3. 適切な相手先不足
地方では、買い手企業の選択肢が限られているため、
- 「譲渡しても事業を継続してもらえないのではないか」
- 「従業員がリストラされるのではないか」
といった懸念が生じやすく、結果としてM&Aに踏み切れないことが多くなっています。
これからの地方中小企業に求められるM&A戦略
地方においても、今後避けては通れない「人口減少」「市場縮小」を見据え、計画的なM&A活用が必要です。
1. 事業承継型M&Aの活用
後継者不在に悩む企業は、地元での雇用維持や企業文化の継承を重視した「事業承継型M&A」を活用するべきです。
地域密着型のM&A仲介業者を活用することで、地元に理解のある買い手を見つけやすくなります。
2. 友好的M&Aによる成長戦略
慎重な文化を尊重しつつ、「共に成長する」をテーマにした友好的M&Aを進めることが、成功のカギになります。
- 経営理念の共有
- 雇用の維持・拡大
- 地域経済への貢献の継続
を重視した交渉が重要です。
3. M&Aリテラシー向上への取り組み
まずは経営者自身がM&Aの基本知識を身につけ、専門家の助言を受けながら慎重に検討を進めることが必要です。
地方自治体や商工会議所が実施するM&Aセミナー、相談窓口の活用も有効です。
地方企業にとってのM&A活用メリットとリスク
メリット
- 従業員の雇用継続
- 地域事業の存続
- 経営資源の活用による新たな成長機会
リスク
- 買い手とのミスマッチによる事業方針のずれ
- PMI（統合後の運営）失敗による組織不安定化
- 地域社会からの不信感
リスクを最小限に抑えるためには、専門家による適切な支援が不可欠です。
まとめ
地方中小企業がM&Aに慎重になる背景には、文化的、構造的な要因が存在します。しかし、人口減少・後継者問題という不可逆な現実に向き合うためには、正しい知識と信頼できるパートナーの支援のもとで、前向きにM&Aを検討していくことが不可欠です。
「会社を守るためのM&A」「地域を未来につなぐM&A」を、一歩ずつ実現していきましょう。
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