物流コスト上昇にどう対応する？中小企業ができるサプライチェーン最適化による事業価値向上のポイント
Akira Kitagawa
2025年、日本国内の中小企業が直面する課題の一つが「物流コストの急騰」です。ドライバー不足に加え、円安と燃料高が重なり、配送費・倉庫費用・梱包資材費がすべて上昇傾向にあります。
中堅・大企業と異なり、価格転嫁が難しい中小企業は“自社努力”による改善が必須です。本記事では、現状と背景を整理した上で、中小企業が実践できるサプライチェーン最適化の具体策を解説します。
物流コスト上昇の主な要因は以下の通りです：
- 2024年の改正労基法施行（トラック運転手の残業規制）
- 原油価格の高止まり
- 人手不足による人件費の上昇
- 大手物流業者の値上げと最低運賃制度の強化
日本ロジスティクスシステム協会の調査（2025年3月）によれば、中小製造業の約65％が物流費負担の増加を実感しており、特に地方企業では代替手段も限られています。
【解決策①】配送ルート・取引先の見直しと共同配送の活用
まず見直すべきは「どこへ、どれだけの頻度で、何を運んでいるのか」という基本データの整理です。
✅ 具体的なアクション
- 複数拠点への小口配送を週1回に集約
- 共同配送（地域の同業他社と便を共有）への切り替え
- 拠点を都市部近郊に再配置し、配送距離を短縮
🚚 実例：関東地方の印刷業者3社が連携し、物流業者1社と定期共同配送契約を締結。単独配送時に比べて、月間物流コストが約30%削減されたというケースがあります。
【解決策②】倉庫・在庫管理の効率化（3PLの導入も含む）
物流費の約3割を占めるのが「保管・在庫関連コスト」です。在庫の過剰保有や非効率なピッキング作業は、見えにくいコストを生んでいます。
✅ 具体的なアクション
- 月次の在庫回転率をKPIとして管理
- 倉庫管理システム（WMS）や簡易なクラウド在庫管理ツールの導入
- 3PL（サードパーティ・ロジスティクス）事業者への一部業務委託
📦 実例：大阪の雑貨メーカーが自社倉庫を廃止し、3PL事業者に在庫・出荷業務を委託。保管スペースを縮小でき、年250万円のコスト圧縮に成功。
【解決策③】受発注～出荷までのIT連携と自動化
物流の最適化は、営業・受注・在庫・出荷部門との連携がカギです。ここにITの導入が大きな効果をもたらします。
✅ 具体的なアクション
- クラウド型の受発注システム導入で在庫の見える化
- 出荷データと連動した請求書・納品書の自動発行
- ドライバー配車アプリ等によるラストワンマイルの効率化
💻 実例：東京都内の食品卸会社がクラウド受発注＋配車管理アプリを導入し、1日あたりの出荷処理時間を30％短縮。業務残業ゼロを実現し、配送遅延クレームも激減。
【補助金・支援策も活用しよう】
国や地方自治体では、物流最適化に対する補助金・支援制度も活発です（例：中小企業等事業再構築補助金、IT導入補助金など）。
💡 最新支援制度例（2025年度）
- 物流・配送合理化支援事業（中小企業庁）：上限500万円
- DX投資促進税制（経産省）：IT導入による税額控除
申請には事前準備が必要な場合が多いため、専門家や商工会議所等に早めに相談しましょう。
まとめ｜「やれること」から一歩ずつ始めよう
物流コストの上昇は避けられない現実ですが、適切な分析と工夫により、中小企業でも十分に対応可能です。特に、次の3点が中小企業にとっての実践ポイントになります。
- 配送頻度と距離の見直し＋共同配送
- 在庫管理の見える化と外部委託
- IT活用による業務の省力化・自動化
“物流改革”は売上には直結しないように見えますが、利益体質を強化するための最重要テーマです。まずは、社内の現状把握から始めてみてはいかがでしょうか。これにより、M&Aにおける売却価格の引き上げにもつながります。会社や事業の売却の前に検討を始めましょう。また会社を買いたい方は、上記のような利益改善ドライバー（要因）の検討も重要です。
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