初心者・実務者向けM&A用語集|50音順でわかりやすく解説

M&A(合併・買収)は、企業経営や投資の意思決定において欠かせない手法です。しかし、M&Aには専門用語が多く、初めて関わる方にとっては理解が難しい場面もあるでしょう。本ページでは、実務でもよく使われるM&A関連用語を50音順でわかりやすく解説します。基礎知識としてはもちろん、実務の辞書としても活用できる保存版です。


ア行

  • アドバイザリー契約:M&Aアドバイザリー会社と締結する業務委託契約。M&A仲介契約とは異なるが、同義として使う業者もあるため注意が必要。
  • アドバイザー:M&Aに関する助言や交渉支援を行う専門家。プロセス管理や専門士業との調整も担う。
  • 意見表明書:初期的に買収意向及び買収条件などを示したもの。また、公開買付(TOB)に対して、被買収企業の経営陣が賛否を表明する文書も指す。
  • 一次情報(ティーザー):秘密保持契約前に買い手候補へ提供する匿名情報資料。
  • インカムアプローチ:収益価値をもとに企業価値を評価する方法。
  • インサイダー取引:非公開の内部情報を基に株式等を売買する違法行為。
  • インプライドボラティリティ:将来の変動率を予測する指標。主にオプション価格から逆算。
  • ウェイバー:財務制限条項違反等における債権者の権利放棄。
  • 営業権:会計上ののれん。買収価格と純資産の差額。
  • 営業譲渡:特定事業の資産・負債のみを売買対象とするM&A手法。
  • エクイティファイナンス:増資等による資金調達手法。
  • エグジット:ベンチャーキャピタル等の投資回収手段(IPOやM&A等)。
  • エグゼキューション:M&A手続きの実行や管理。
  • エスクロー:条件付きで第三者を介して資金決済を行う仕組み。
  • エンジェル投資家:創業初期のベンチャー企業に出資する個人投資家。
  • 黄金株:重要議案に拒否権を有する特別な株式。
  • オフバランス:貸借対照表に計上されない資産・負債。
  • オプション:一定条件での買付・売却の権利。
  • 親会社:40%以上の議決権を持ち実質支配する企業。
  • オークション方式:入札により買い手を選定する売却手法。

カ行

  • 会社分割:会社を複数の法人格に分割し、それぞれに事業や資産を承継させる手法。組織再編や事業ポートフォリオの最適化に活用される。部門売買という観点からは事業譲渡に類似しているが、事業譲渡が「個々の資産」の譲渡であるのに対して、会社分割は「事業部門一体としての切り離し」という点が異なる。会社分割には、新しく設立した会社に事業を移す「新設分割」と、すでに存在している会社に事業を移す「吸収分割」がある。特に吸収分割は、資金力のない小規模なベンチャー企業が大企業の一事業部門を買収するときなどに有効である。また、会社分割によって新設会社の株式又は既存会社の株式が発行されるが、この株式を誰に割り当てるかによって「物的分割」と「人的分割」に分類される。
  • 買戻条項:一時的に売却した株式などを、将来売主が再取得できる契約条項。投資契約に付されることがある。
  • 瑕疵担保責任:売却対象に欠陥がある場合、売主が買主に対して負う責任。
  • カニバリゼーション:自社製品同士が競合し、市場シェアを奪い合う現象。
  • 株式移転:新設持株会社を通じて企業グループを再編する制度。純粋持株会社の設立が目的。
  • 株式公開(IPO):未上場企業が株式市場に株を公開し、資金調達を行うプロセス。
  • 株式公開買付け(TOB):上場企業の株式を市場外で取得する手法。公開ルールに基づく手続きが必要。
  • 株式交換:自社株式を対価に他社を買収する手法。現金を使わない買収が可能。
  • 株式譲渡:株式を譲渡することで経営権を移転する方法。企業の契約や債務も引き継がれる。
  • 株式分割:既存株式を複数に分割することで流通性を高める手法。資本金の変動は伴わない。
  • 株主間協定:複数株主間での経営方針や株式売買に関する取り決め。合弁契約でも活用される。
  • 株主資本利益率(ROE):自己資本に対する利益の割合を示す指標。収益性の目安となる。
  • 株主総会:株式会社の最高意思決定機関。合併や定款変更など重要議案を決議する。
  • 株主代表訴訟:株主が経営陣の責任を問うために起こす訴訟。
  • 簡易組織再編:法定要件を満たすことで株主総会を省略できる再編手法。
  • 合併:複数の会社を1つに統合するM&A手法。吸収合併と新設合併がある。
  • 企業価値:DCF法や類似会社比較法などで算定される企業の経済的価値。
  • 期待収益率:将来的な収益の期待値。投資判断の基準。
  • 希薄化:増資等により1株当たりの価値が減少する現象。
  • 基本合意書:M&A取引に向けた基本的な合意を文書化したもの。
  • キャピタルゲイン:資産売却による差益。
  • 救済型M&A:経営不振企業を支援・再建することを目的としたM&A。
  • 吸収合併:一方の企業が他方を吸収し、存続会社となる合併形態。
  • 競業避止義務:M&A後、売主が同業で新たに起業・参入しないことを契約で制限。
  • 拒否権:議決権の一定割合を保有することで重要議案を否決できる権利。
  • 金庫株:企業が取得し保有する自社株式。自己株式とも呼ばれる。
  • 議決権:株主が株主総会で議案に投票する権利。
  • 議決権制限株式:一定の議案について議決権を制限された株式。
  • 業務提携:資本移動を伴わない協業関係の構築。
  • クラウンジュエル:敵対的買収防衛策の一つで、重要資産を他社に譲渡して買収意欲を削ぐ手法。
  • クレイトン法:米国の反トラスト法の一つ。企業結合の制限を規定。
  • クレジットスプレッド:信用リスクに応じて金利に上乗せされる差。
  • クロスボーダー:国境を超えるM&A取引。
  • クロージング:取引完了のこと。契約締結と資金決済が完了した状態。
  • 偶発債務:将来条件が満たされたときに発生する可能性のある負債。手形割引、裏書手形、債務の保証、引渡済の請負作業又は売渡済の商品に対する各種の保証、係争事件に係る賠償義務、先物売買契約、受注契約等がある。偶発債務は、財務諸表上その内容及び金額等が注記される。
  • 経営権:議決権を通じて企業の経営に影響を及ぼす権利。株式取得により取得可能。
  • 経営承継法:中小企業の事業承継を支援するための法律。相続税や金融支援などの措置がある。
  • 継続所有義務(ロックアップ):新株取得後、一定期間売却を制限する契約義務。
  • 現在価値:将来のキャッシュフローを割引率により現在時点で評価した金額。
  • 原資産価格:オプション取引における基礎となる資産(株式など)の価格。
  • 減損:資産の帳簿価額が回収可能価額を下回る場合の会計処理。
  • 現物出資:現金以外の資産(不動産や株式など)を用いて行う出資。
  • 公開買付届出書:TOBを行う際に金融庁へ提出する開示書類。
  • 国際財務報告基準(IFRS):IASBが策定する国際会計基準。
  • コストアプローチ:純資産価値をもとに企業価値を評価する手法。
  • コベナンツ:ローン契約に付随する財務制限条項。一定基準を下回ると債務不履行となる可能性がある。
  • コーポレートガバナンス:企業経営の監督・統制の仕組み。
  • ゴーイングプライベート:上場企業を非公開化すること。買収により上場廃止とする手法。
  • ゴールデンパラシュート:敵対的買収時に経営陣に高額な退職金を与える防衛策。

サ行

  • 最終契約書:株式譲渡契約、事業譲渡契約等、M&Aの最終段階で締結される契約書。
  • 再調達原価法:買収対象事業を評価する際の評価方法のひとつ。ゼロからその対象事業を創り上げる際にかかるコストを尺度として評価する。
  • 三角合併:合併の際に、消滅会社の株主に対して、存続会社の株式ではなく存続会社の親会社の株式を割当てる合併手法のこと。
  • サンセット条項:買収防衛策の妥当性を担保するため、一定期間ごとにその適否を株主に諮る仕組みのこと。2005年に経済産業省及び法務省が公表した防衛策指針に基づく。
  • 財産評価基本通達:相続税・贈与税を計算する際に対象財産の価額評価基準として国税庁が定めているもの。非上場株式の評価にも用いられるが、第三者間M&Aでは採用は少ない。
  • 財務デューデリジェンス:買収先企業の財務諸表の適正性を検証する調査。簿外債務や資産の劣化などを検出する。
  • シェルカンパニー:M&Aの資金調達をするために設立される実体のないペーパー企業。SPC(Special Purpose Company、特別目的会社)とSPV(Special Purpose Vehicle、特別目的事業体)と同義。
  • 資産査定:貸借対照表に計上されている資産の実在性と評価時点の価値を確認する。
  • シティ・コード:英国のM&Aに関する規律「公開買付及び合併に関するシティ・コード」のこと。
  • シナジー効果:企業結合により得られる相乗効果。例:コスト削減や販売拡大など。
  • シナジーバイヤー:自社の事業強化を目的としてM&Aを行う事業会社。
  • シニアローン:通常の銀行貸出金。メザニンローンより優先弁済権がある。
  • 支配権プレミアム:議決権の過半数以上など、経営権を取得するために支払うプレミアム価格。
  • 資本コスト:資金を調達するために必要とされる費用。借入金・社債・株式コストに分類される。
  • 取得条項付株式:一定条件発生時に会社が株式を取得できる種類株式。買収防衛策として活用される。
  • 取得請求権付株式:株主が会社に対して株式取得を請求できる種類株式。
  • 守秘義務契約(NDA/CA):機密情報を第三者に開示しないことを定めた契約。M&A初期段階で締結される。
  • 主要株主:議決権を10%以上保有する株主。
  • 種類株式:議決権・配当などの条件が普通株式と異なる株式。資金調達や買収防衛策に活用。
  • 証券取引等監視委員会(SESC):証券市場の監視機関。不公正取引(インサイダー等)を監督。
  • 新株予約権:将来一定の価格で新株を取得できる権利。ストックオプションなど。
  • 新設合併:複数の会社が解散して新たに設立する会社に事業を承継する合併形態。
  • 時価評価:資産を市場価格で評価する会計処理。
  • 時間的価値:オプション価値のうち、満期までの期間に基づく価値部分。
  • 事業承継:会社の経営を後継者や第三者に引き継ぐこと。
  • 事業譲渡:特定事業の資産・負債を選別して売却するM&A手法。
  • 自己株式:会社が保有する自社株。議決権や配当権は通常ない。
  • 純資産価額法:資産の時価から負債を控除して企業価値を評価する手法。時価純資産法とも呼ばれる
  • 譲渡制限株式:譲渡に取締役会等の承認を必要とする株式。
  • 譲渡制限会社:株式譲渡に際し、会社の承認を必要とする会社。
  • 情報開示:会社法や金融商品取引法に基づき利害関係者に情報を提供すること。
  • 人的分割:会社分割で株式を既存の株主に交付する手法。
  • 垂直型M&A:「製造→販売」など、バリューチェーンに沿った異業種統合型のM&A。
  • 水平型M&A:同業種の企業間での統合。シェア拡大・スケールメリットを狙う。
  • スクイーズアウト:少数株主を排除し、完全子会社化を行う手法。株式併合や現金対価合併を用いる。
  • スタンドスティル条項:再買収防止のために、株式取得や買戻しを一定期間制限する条項。
  • ステークホルダー:企業の利害関係者。株主、従業員、顧客、取引先、債権者など。
  • ストックオプション:一定の価格で自社株を購入できる権利。従業員インセンティブとして活用。
  • ストックオプション会計:新株予約権付与に関する会計処理。
  • ストラテジックバイヤー:シナジーを目的とする事業会社の買い手。ファンド等のフィナンシャルバイヤーと区別される。
  • スピンオフ:会社の一部を切り出して独立会社とする再編手法。完全分配型会社分割が該当。
  • スーパーマジョリティ条項:特別決議要件を強化し、敵対的買収を困難にする買収防衛策。
  • 成功報酬:M&A成約時にアドバイザーへ支払う報酬。リテイナー報酬と対を成す。
  • 潜在株式:将来発行可能性のある株式。新株予約権等が該当。
  • 税制適格企業再編:税法上の条件を満たす企業再編。譲渡益課税の繰延べや欠損金引継ぎが可能。
  • 善管注意義務:会社役員等に課される善良な管理者としての注意義務。
  • 全部取得条項付種類株式:特定の種類株式を株主総会決議で一括取得できる株式。
  • 総資産利益率(ROA):企業の資産に対する利益の割合。税引後純利益÷総資産で算出。

タ行

  • 退職給付引当金:従業員の退職に備えて企業があらかじめ計上する負債項目。M&Aにおいては買収対象企業の債務として精査が必要。
  • 大量保有報告書:上場株式等を5%以上取得した際に金融商品取引法に基づいて提出が義務づけられる報告書。5営業日以内の提出が必要。
  • ターミナルバリュー:DCF法で企業価値を算定する際に、予測期間終了後のキャッシュフローを基に計算する企業の永続価値。
  • 第三者割当増資:特定の第三者に対して新株を発行する増資手法。資金調達やM&A防衛策として利用される。
  • ダイリューション:新株発行などによって既存株主の持株比率や1株当たりの利益が低下すること。希薄化ともいう。
  • チェンジオブコントロール条項:契約当事者の経営権が変更された場合に契約を見直すことができる条項。M&Aの際の契約リスクとして重要。
  • 定款:会社の基本的ルールを定めた根本規則。会社の商号・目的・本店所在地・機関設計などを規定。
  • 適時開示:上場企業が投資判断に重要な情報を速やかに開示する制度。情報の公平性確保と株主保護を目的とする。
  • 敵対的買収:対象会社の経営陣の同意を得ずに強行される買収。防衛策としてポイズンピルやホワイトナイトがある。
  • ディスカウンテッドキャッシュフロー法(DCF法):将来予想されるキャッシュフローを割引率で現在価値に換算し企業価値を算定する手法。
  • ディスクロージャー:企業が投資家等に対して経営内容や財務状況を開示すること。
  • デットエクイティスワップ(DES):企業が債務を株式に転換することにより、財務体質を改善する手法。
  • デットファイナンス:借入や社債などの負債による資金調達。エクイティファイナンスと対比される。
  • デューデリジェンス(DD):買収前に対象企業の財務・法務・事業などを詳細に調査する手続き。
  • 投資事業有限責任組合:ベンチャー企業への投資などを目的に設立される組合形態。無限責任組合員と有限責任組合員で構成。
  • 投資ファンド:資金を調達し投資を行う組織。M&Aでは買収主体となることが多い。
  • 特別決議:株主総会において、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な重要事項の決議。
  • 匿名組合:出資者が組合員として利益配分を受けるが、経営には関与しない契約形態。M&Aでの投資手法としても利用される。
  • 独占交渉権:M&A交渉において、売り手が一定期間他の買い手との交渉を行わないことを約束する権利。

ナ行

  • ナスダック(NASDAQ):アメリカの新興企業向け株式市場。日本企業が海外上場する際の代表的な市場の一つ。
  • 内部者取引(インサイダー取引):未公表の重要事実に基づき株式などを取引する行為。金融商品取引法で規制されている。
  • 内部留保:企業が利益の中から配当などを行わず、社内に蓄積する資金。M&Aの原資としても用いられる。
  • 内部統制:企業が業務の有効性・効率性、財務報告の信頼性、法令遵守、資産保全を達成するために構築する組織内プロセス。統制環境、リスク評価、統制活動、情報伝達、モニタリング、IT対応の6要素から構成される。
  • 入札方式:M&Aの進行方法の一つで、複数の買い手候補が提示した条件をもとに最適な買収先を選定する手法。
  • 二段階買収:TOBなどで過半数を取得した後、残りの株式を取得して完全子会社化する買収手法。
  • 日本取引所グループ(JPX):東京証券取引所や大阪取引所などを傘下に持つ持株会社
  • ネームクリア:秘密保持契約締結後、買い手候補に対して譲渡希望企業の名称など詳細情報を開示するプロセス。
  • ノックアウト条項:原資産が一定価格に達した時点でオプション権利が消滅する仕組み。
  • ノックイン条項:原資産が一定価格に達した場合に、オプション権利が発生する仕組み。
  • のれん(代):買収価格が売却企業の純資産額を上回る際に、その差額として計上される無形固定資産。会計・税務上の概念で、ノウハウやブランド価値等を含む。
  • 時価純資産+のれん法(年買法):企業評価方法のひとつ。算定された時価純資産に、継続的な超過収益力(のれん)を加味して株式価値を評価する手法。のれんは、平均利益額または超過利益額に、継続見込み年数を乗じて算出する(例:営業権 = 利益×年数)
  • ノンネームシート:譲渡企業の実名を伏せた匿名の会社概要資料。買収候補先への初期打診時に活用される。
  • ノーショップ条項:売却企業が、一定期間中に他の第三者と買収交渉を行うことを禁止する条項。
  • ノートーク条項:競合他社との交渉・情報提供を禁ずる契約条項。取引の独占交渉権保護に用いられる。

ハ行

  • 買収監査(アクイジション・デューデリジェンス):M&Aにおける対象企業への詳細な調査。法務・財務・税務など多角的に行われる。
  • 買収ファイナンス:企業買収を行うための資金調達手法。LBOファイナンスなどが含まれる。
  • 排他的交渉権:売却側が一定期間、特定の買い手とだけ交渉する権利。他の交渉を制限する契約条項。
  • 発行市場:企業などが新たに証券を発行して資金を調達する市場。プライマリーマーケットとも呼ばれる。
  • 反対株主:合併などの重要議案に反対する株主。会社法により株式買取請求権を有する。
  • 非上場株式:証券取引所に上場していない企業の株式。M&Aでは評価が難しく、慎重な査定が必要。
  • 秘密保持契約(NDA):取引交渉中に知り得た機密情報を第三者に開示しないための契約。
  • 表明保証:売主が対象会社の状況に関して事前に説明・保証する条項。買収後のリスク回避に重要。
  • 非支配株主:他の会社 (親会社) に50%超の株式を保有されている会社 (子会社) において、親会社以外の少数株主のこと。
  • ビジネスデューデリジェンス:買収対象企業の属する市場規模やその動向、競合環境の推移等を調査すること。買収対象企業を多面的に分析し、買収の適否、シナジー効果の大小、買収後の統合戦略等を把握するために行われる。
  • 分社化:事業部門などを分離し、別法人として独立させる企業再編の手法。M&Aの準備として行われることもある。
  • 分割型分割:会社分割の手法の一つで、分割会社の株主に新設会社株式を交付する方式。
  • フェアネスオピニオン:取引価格の妥当性についての第三者意見ともいう。M&Aやファイナンスの際に、スキームや評価額、合併比率などが妥当であるとする第三者意見。
  • フリーキャッシュフロー:企業が本業で得た現金収入から、設備投資などの将来の成長や維持に必要な支出を差し引いた後に残る、自由に使える現金のこと。企業の財務健全性や投資余力を評価する上で重要な指標
  • プライベタイゼーション:公開会社の非公開化。欧米ではゴーイング・プライベートともいう。
  • プロキシーファイト:委任状争奪戦ともいう。株主総会の開催前に、多数の株主から委任状 (Proxy) を根回ししてもらっておくこと。
  • ベアハッグ:株主にとって有利な条件提示であるため経営陣として承諾せざるを得ないような買収提案
  • ヘッジファンド:高リスク高リターンを狙う投資ファンド。アクティビストとして企業に圧力をかけることもある。
  • ベンチャーキャピタル(VC):未上場の成長企業に出資し、IPOやM&Aによる利益回収を狙う投資会社。
  • 法務デューデリジェンス(LDD):契約書、訴訟、知的財産などの法的リスクを精査するM&Aの調査プロセス。
  • ホワイトナイト:敵対的買収からの防衛策として、友好的な第三者に買収を依頼する戦略。
  • ポイズンピル:買収防衛策の一つで、買収者にとって不利な条件を発動させる仕組み。
  • 簿外債務:貸借対照表に計上されていない負債。M&Aにおける重大なリスク要因。代表的な例としては、保証債務等の偶発債務が挙げられる。また、中小企業の場合、未払賞与や退職給付債務、貸倒引当金等が貸借対照表に計上されていないかなどが重要
  • ボラティリティ:株価や通貨などの資産価格がどの程度変動するかを示す指標。価格の不確実性やリスクを数値化したもので、M&Aにおける企業価値評価や金融商品の価格形成に大きく関与する。

マ行

  • マネジメントバイアウト(MBO):経営陣が自社の事業を買収し独立する手法。経営者による自立や非公開化を目的とする場合が多い。
  • マンデート:M&Aアドバイザーとの業務委託契約。正式なアドバイザリー業務依頼を意味する。
  • マーケットアプローチ:企業価値評価手法の一つで、上場企業の株価やM&A取引事例などを基に評価対象企業の価値を推定する。
  • みなし配当:自己株式取得や組織再編等で株主が受け取る金銭等が、内部留保からの払い戻しとみなされ課税対象となるケース。
  • 民事再生法:再建型の倒産手続き。主に中小企業の再生を目的とし、債務返済の猶予と事業継続を図る。
  • 無議決権株式:株主総会で議決権を行使できない株式。配当や残余財産の優先が付与される場合もある。
  • 名義株:株主名簿上の株主と実質的な所有者が異なる株式。名義貸与の形態。
  • メザニンファイナンス:シニアローンとエクイティの中間的な資金調達。リスクとリターンも中間的。
  • 持株会社:他社の株式を所有して企業グループを統括・管理する会社。
  • 持分プーリング法:企業結合会計処理の一つ。資産・負債を帳簿価額で引き継ぎ、のれんを計上しない方式。

ヤ・ラ・ワ行

  • 役員選任権付株式:役員の選任に関して議決権を有する種類株式。委員会設置会社または公開会社では発行不可。
  • 役員退職慰労金:退任役員に支給される慰労金。支給の有無や金額は通常、株主総会で決議される。
  • 有価証券届出書:1億円以上の有価証券を募集または売出する際に発行者が提出する書類。
  • 有価証券報告書:上場企業が毎事業年度終了後3カ月以内に提出を義務づけられている開示書類。
  • 友好的買収:被買収企業の経営陣の同意のもとで進行する買収。第三者割当増資などが該当。
  • 優先株式:配当などで普通株より優先される株式。議決権を有さない場合が多い。
  • 優先交渉権:買収交渉において、他者に先駆けて交渉する権利。
  • 有利発行:時価よりも低い価格で新株や新株予約権を発行すること。
  • ヨーロピアンオプション:権利行使が満期日に限られるオプション。アメリカンオプションとは対照的。
  • ライツプラン:新株予約権を用いた買収防衛策の一種。
  • 利益相反:一方の利益が他方の不利益となる状況。取締役の忠実義務との関連で問題となる。
  • リスクフリーレート:無リスク資産に対する理論的な利回り。10年国債利回りなどが用いられる。
  • リスクプレミアム:投資家がリスクを負うことに対して要求する超過収益率。
  • 略式組織再編(略式合併):90%以上の出資比率を有する子会社との合併等において、株主総会決議を省略できる手続き。
  • 流動性ディスカウント:大量の株式を売却する際に市場価格を下回る価格で評価される減価要因。
  • 類似会社比準法:上場している類似企業の株価指標を基に非上場株式の評価を行う方法。
  • 類似取引比準法:過去のM&A取引事例を基に対象企業の企業価値を算定する方法。
  • レップアンドワランティー:売主が買主に対して表明・保証する契約条項。表明保証とも。
  • レバレッジ効果:借入によって自己資本の利益率を高める効果。
  • レバレッジドバイアウト(LBO):買収対象企業の資産を担保に融資を受け、買収資金を調達する手法。
  • 連結調整勘定:親会社と子会社の帳簿価額差額の調整勘定。のれんと同様の扱いを受ける。
  • 連帯保証:主たる債務者と同等の責任を負う保証人。
  • レーマン方式:M&A仲介手数料の算出方法。取引金額に応じて料率が段階的に適用される。
  • ロックアップ:一定期間株式の売却を制限する取り決め。M&Aではキーマンの離脱防止策「キーマン条項」も指す。
  • ロングリスト:M&A候補先の初期リスト。基礎調査や打診の対象とする。
  • ローントゥバリュー(LTV):担保価値に対する融資比率。金融機関の貸出審査指標。
  • ワラント:一定条件下で新株を取得できる権利。新株予約権と同義。
  • 割引キャッシュフロー法(DCF法):将来のキャッシュフローを現在価値に割引して企業価値を評価する方法。
  • 割引率:将来の価値を現在価値に換算する際に使用する利率。WACCが一般的。

英数字行

  • 5%ルール:上場会社の株式等(新株予約権付社債などの潜在株式を含む)を5%以上取得した場合、その日より5営業日以内に大量保有報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない(金融商品取引法第27条の23)。
  • CAPM:株式などのリスク資産に対する期待リターンの形成を示す理論。企業評価時の割引率算定に利用される。
  • CA:守秘義務契約。NDAと同義で、Confidentiality Agreementの略。
  • DCF法:企業評価手法の一つで、将来予測キャッシュフローを現在価値に割引して企業価値を算出する方法。
  • DES(Debt Equity Swap):企業が債務を株式に転換することで財務体質を改善する手法。「債務の株式化」とも呼ばれる。
  • D/Eレシオ:負債が資本の何倍かを示す指標。財務の健全性評価に用いられる。
  • EBITDA:税引前利益に利息・税金・減価償却を加算した利益指標。国際的比較や企業評価に活用される。
  • EDINET:有価証券報告書等をインターネット経由で提出・開示する金融庁の電子開示システム。
  • ESOP:従業員持株制度。従業員が自社株を保有することでインセンティブとする。
  • EVA:Economic Value Added(経済的付加価値)。投下資本に対する超過利益を評価する指標。
  • EV:企業価値。EV=株式時価総額+有利子負債-現預金で算出される。
  • FA:ファイナンシャルアドバイザー。M&Aに関する助言や支援を行う専門家。
  • GAAP:一般に公正妥当と認められる会計原則。財務報告の基準として用いられる。
  • IFRS:国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)。国際的な会計基準。
  • IPO:Initial Public Offeringの略。株式の新規公開を指す。
  • IRR:Internal Rate of Returnの略。投資の収益性を示す内部収益率。
  • LBO:Leveraged Buy Out。企業買収において対象企業の資産を担保に借入資金で買収する手法。
  • MBO:Management Buy Out。経営陣による自社株式の買収による独立・非公開化。
  • MSCB:転換価格修正条項付転換社債。M&Aの資金調達手段として利用される。
  • NDA:秘密保持契約(Non-Disclosure Agreement)。情報漏洩防止のための契約。
  • PER:株価収益率(Price Earnings Ratio)。株価が1株当たり純利益の何倍かを示す。
  • PMI:Post Merger Integrationの略。買収後の組織・業務統合プロセス。
  • Qレシオ:株価を1株あたりの実質純資産で除した指標。PBRに類似。
  • SPC:特定目的会社(Special Purpose Company)。資産流動化など特定の目的で設立される。
  • SWOT分析:企業戦略立案手法。強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を分析。
  • TOB:株式公開買付(Take Over Bid)。市場外で不特定多数の株主から株式を買い付ける手法。
  • VWAP:出来高加重平均株価。売買高で加重平均された株価。
  • WACC:加重平均資本コスト(Weighted Average Cost of Capital)。DCF法で用いる割引率。
  • XBRL:財務情報の電子開示フォーマット。上場企業のEDINET提出に使用。
  • In-in:日本国内企業同士のM&A。
  • In-out:日本企業による海外企業の買収。
  • Out-in:海外企業による日本企業の買収。